欧米人のトレーナーがよく、バーベル・スクワットを行う際は「踵を床につけなさい」と指導することがあります。これは、欧米人の足の長い体格だと、重心がつま先に寄りすぎて足の親指が変形するほど力が入ってしまっているケースがあるため、踵を床につけて、重心を中足寄りにするように(先ほどの画像でいえば、重心を赤色部分に移すように)指導しているわけです。一方、欧米人と比べて重心が踵側(先ほどの画像の青赤色部分)に寄りがちなアジア人に、同じような指導をすると誤解を生むことが多々あります。重心を落とす位置は中足部分、心持ちつま先部分に寄らせてバランスを取るのが理想的です。
欧米人がするようにつま先に重心を寄せようと意気込みすぎると、今度はフォームを安定させることが難しくなるので、「重心は踵に落としてはいけない、中足の内側に置く」と心得ておくと良いと思います。
スクワットのフォームを基本から見直してみる
スクワットで「膝を大きく前に出さない」とは 前回、スクワット動作において、足のつま先より「膝を大きく前に出さない」ことについては軽く触れたのですが、ポイントは「大きく」前に出さないという点で、大きくな ...
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上の画像は、主に(フル)スクワットと(床引き)デッドリフトを行う際に、重心を床に落とした位置が中足より前側と踵側の場合での、筋肉の付き方の違いを表したイメージです。踵側に重心が傾くほど、お尻の形が四角く、関節ががっしりとした体型に近づきます。一般に、重心を踵寄りに落とす姿勢では、お尻の下側の筋肉に効きますので、ヒップアップ効果を弱めてしまい、足が長く見えなくなります。また僧帽筋まわりを強く刺激するので、肩のラインが丸くなり同時に腰のくびれをそいでしまいます。さらに足首、膝の関節まわりが強化され、結果的に太くなるので見栄え的にはよくありません。これだと、格好良く服を着こなすことから遠ざかってしまいます。オマケに、せっかく強化した筋肉は普段の運動にはさほど必要とされないので、実用性も低く、スポーツなどではその増強した筋肉の重さ分、パフォーマンスが低下することもあります。
一方、重心を床に落とした位置が中足(中足より前の部分)の場合、普通にお尻の丸みが増すように大臀筋部分を刺激し、お尻の位置が高くなるので足が長く見え、関節が太くなるような筋肉の肥大にはなりません。この差はウエイトトレーニングで重量を扱う際に顕著に出てきます。女性の場合は、お尻にボリュームをつけるために行ったスクワット運動が逆効果をもたらしかねない(お尻ではなく足から腰までを単調に太くしてしまっただけになりかねない)ので、重量を扱うときは特に注意しましょう。
デッドリフトで犯しがちな間違いを正す
デッドリフトのフォームを正してみよう このフォームを正しく矯正するには、以下のようにします。 矯正されたフォーム(オレンジの三角印のところ)を上の画像で確認してみると、膝を少しばかり曲げることで、お尻 ...
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ウエイトトレーニングが無駄にならないために
どこに重心を落とすかは(重心線の位置は)、シェイプアップのでき映えそのものを変えてしまいかねないほど大切です。このことを踏まえてウエイトトレーニングを行うかぎり、女性が気にするように下半身がガチガチの筋肉でまとまってしまうことなどあり得ません。一方、外側加重、踵重心などの要素を組み合わせてしまえば、筋肉が格好よくつかないので下半身が太くみえるようなスタイルを作り上げてしまいます。
はじめは自分の重心線を意識できて同時にコントロールできるウエイト負荷を選び、フォームを確実なものにしてから負荷をあげていくのが最善です。シェイプアップを急ぐあまり、負荷を上げすぎて不要な筋肉を刺激するのではなく、重心をコントロールして姿勢(身体)を安定させるよう、筋力で支える(バランスする)ことができるようになるのがまず第一です。フォームをマスターしたとしても、負荷をある程度まで増やさないと筋肉は発達してくれないのも事実で、負荷を増強しトレーニングしているときは(重心の位置など意識できないほど集中するはずなので)、トレーナーに確認してもらう、自分でビデオ撮影するなどの助けや工夫も必要です。
まとめ
- 重心は自分でコントロールする(バランスを取る)
- 重心線は各中足の内側にくることを意識する
- 重量を扱うときこそ、重心線がどこになるかが大切